第17話/「○○との戦い」


主な話者:トゥラルパン

権力者の命令を先読みして行動する組織
世論調査(アンケート)、問う団体、問う方法、問う場所によって結果は異なる
「○○との戦い」麻薬組織、テロ、共産主義…名目を次々に変え戦闘は続く
「バランスのとれた見方」


沼の原では、水道の民営化に反対する運動のさなかに、一人の少年が警察に撃たれて死に、広場で通夜が行われることになっていました。

うさぎたちも広場へ出向きます。

そこで見た光景。

人びとが、それぞれの生活と仕事を基盤に、外からの圧力への怒りを身の内にたぎらせていました。



「○○との戦い」。よく聞く言葉。この話がとても役に立った。確かによく見ると、名前は違えどどれも各地と「基地帝国との戦い」だ。

ある一国が文句なしに一番強い世界。

昔、父が「戦争がやりたくって仕方ないんだよなあ、あの国は。だから難癖つけて」と新聞を読みながら毒づいていたのを思い出した。田舎の大工、鋭い。


命をかけて戦う…今の私たちにその覚悟が持てるだろうか。持てるわけない、無理無理、と思わされてはいないか。

著者による「金曜の東京」という文章に書かれていたが、昔は絵本の国の人びとは荒っぽかったように思う。町の親父たちは強くて怖かったし。

それがうまい具合に骨抜きにされているんだろうな。

何をしでかすか分からない感じ。もしかしたらそれが絵本の国の人びとの特長のひとつなのかも、と『うさぎ!』を読んで思う。

めちゃくちゃな勢い、とか。何が何でも、とか。


アンケートの話も出てくる。

アンケート、特に市場調査によくつきあう私。答えていると、笑っちゃうような設問があったりする。

「我が社の魅力はどこですか」「この製品のイメージは次のうちどれですか。洗練、知的、若々しい、ポップな、優しい、ユーモアのある」「この商品、知っていますか、欲しいと思いますか、なぜ欲しくないのですか」「この情報、どこで知りましたか」「魅力に感じますか、それとも魅力に感じませんか、その理由は」「ファッション、スポーツ、映画、ゲーム、あなたの趣味はどれですか」

こういうのを集計して、会議にかけて、決定がなされていくのかー…。

行きたい方向が違うことが明らかになる。

でもこの前、好きな布屋さんのアンケートは答えてて楽しくなった。「うちのパターンはつくりやすいですか、もっとこうしてほしい点は」「どんな布が好きですか」「おまけに入っていたらうれしいのは次のうちどれですか。リボン、糸、ボタン、タグ」とか、そんなの。

その道を極めているお店や企業には、どこかかっこいいところがある。姿勢がぶれないからかな。


もやもやーっとしていた企業からの声やお店からの声、新聞からの声、テレビからの声が、『うさぎ!』を読んだら少し違って聞こえてくる。


沼の原での戦いが、じわじわと明瞭になって、力強い景色が私に届く。

何度か読み返してやっと、届く。とげとげや熱さや意地悪さ、あたたかさや優しさや皮肉っぽさ、そういう刺激に満ちた物語だからだと思う。表面を触るだけでちくちくと、ぽかぽかと、いろんな感触を連れてくる。だから、奥のほうを読み解くまでに時間がかかる。『うさぎ!』はそういう物語だと思う。

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