2012年9月11日火曜日

第11話/食



銅の山脈の上を吹いていく風。風はどこかに向かっています。風は道すがら、男の子がかまどの火を起こそうとしているところに寄り道をします。

ここはアブラヤラ大陸…ネイティブアメリカン(先住民族)の文化が評価され、同じ土壌を持つメキシコ人は基地帝国ではきつい仕事をしています。

そして、沼の原大学では、人びとが集まってこんな話をしています。


「反基地帝国主義感情」と定義されてしまうこと
基準服としてのスーツ(冷血の国の民族衣装)
軍事産業と経済
ティーナ(他に対案はない)、タータ(何千もの対案)

絵本の国の、詩のように美しい食べ物の提案(『食生活指針』)
食べること
栄養成分教(ヘルシー教)


私たちの想像力と夢は、灰色に翼を縛り上げられて、助けを待っている…



食べ物、食べることについても詳しく語られる第11回。

特に『食生活指針』の引用が印象に残りました。

お話の前半では、多くの意見が「半基地帝国主義感情」として片づけられてしまうことについて異論を表しています。世界の中の一国が、数百もの基地を世界中に持ち、他の国のすべての軍事予算を合わせてもその一国の軍事予算には敵わないという現状。今の世界は様々な可能性の中の、ひとつの姿でしかない。「こうでない世界はありえる」と、登場人物たちは語ります。


「仕方がないよ、こういう世の中なんだから…」と言った途端に想像力はついえる。それは楽。それ以上考えなくてすむからだ。

考えるのには力がいる。忍耐がいる。時間がかかる。大人になって自由に考えられる立場になったのに、先生がいなくなった途端に何を考えていいか分からなくなる。丸をつけてくれる人がいなければ、進めないなんて、情けないと思う。

忍耐強さは私たち日本人の特長のひとつではなかったか?


食べ物についての話は語りやすい。どんな人も食べずには生きられない。

というわけで、思いついた食べ物の話をふたつ。

ひとつは、絵本の国の「お子様ランチ」について。

「お子様ランチ」とは、食事のお店にたいてい揃えてある、子ども用のメニューのこと。これが、「なめられてるなあ」と思うほど、どこの店でも同じなんだ。

ハンバーグ、から揚げ(鶏肉のフライ)またはえびフライ、ポテト(揚げじゃがいも)、プリン型のごはん、ふりかけ、ゼリー、レタス一切れ。そして、おもちゃのおまけ。

子どもたちも心得ていて、おもちゃを目当てにお店を選ぶことも多々ある。

「揚げてあればいいんでしょ、おもちゃついてればいいんでしょ、こんなもんで」という感じだ。

この法則が大人のメニューにも当てはまらないとは言えない。

「脂がのって、こってりしてて、安くて、おなかがふくらめばいいんでしょ、こんなもんで」、どのメニューもよく見るとそんな感じ。

相手が怒り出すまで、程度を少しずつ少しずつ下げてる気がする。そして、絵本の国の人たちはめったに怒らない。

それを灰色も分かってる気がする。


ふたつめは、母乳とミルクについて。

お話の中に「玄米のまま食べるのと、白米に玄米の栄養をつけたして食べるのでは、吸収が違う」というような箇所があった。

どこかで知っている現象だと思って、思い出したのが母乳の話。

我が子が乳児だったころ、「ミルク(人工的につくった乳児用のお乳)は母乳と成分的には変わらない。安心してください」という企業側の主張をよく目にした。企業だけでなく、医者もそう言っていた。

そしてこの主張は、母乳で育てることができなかった母親たちの主張に取り替わっていく。乗り移るというのか。「母乳にこだわらなくてもいいよねえ、だって栄養的には一緒だもんね」。

同じ母親からそういう意見が出てくると、こちらとしては反論しにくい。「そうだよね」とうなずかざるをえなくなる。

でも、心の底では思ってる。同じはずないよ、と。

母乳は母と子と力を出し合って育てていくもので、双方の協力がなければ母乳はおいしくなくなって、止まる。母親は脂っぽいものや甘いものを避けて、ごはんをよく食べて、血をつくる。(お乳は白い血だそうだ。)眠くても泣かれたら吸わせる。子どもも最初は飲みにくい。口が小さいし、力も弱い。哺乳瓶のが楽だけど、がんばって吸う。大きな声で泣いて、母親を叩き起こす。いっぱい遊んでおなかをすかせる。

それで肌と肌を合わせて、体温を触れ合わせて、そのほかに何もできない状態で、飲む・飲ませる。ごくごく飲んで、赤ちゃんは眠くなる、眠って体を育てる。

粉を湯に溶かしてきゅーっと一気飲みさせるミルクと、同じはずがない、と思う。


そんな話ばっかりだ。数値化してその数字をありがたがる、文書化してその文書に安心する。自分と違う意見は無視する。

想像力は捕らえられる。


奪えるはずがない、と思う。気持ちが自由に飛ぶことを禁止するなんて、できるはずがない。

でも罠はいつでも存在する。これが空だと思って飛んでいた場所は、灰色の仕掛けたかごの中でしかないかもしれない。

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