2012年8月31日金曜日

なぜ、「絵本の国」か?


『うさぎ』では、国の名や街の名の多くが、実名でない名前に置き換えられている。

絵本の国は日本、基地帝国はアメリカ、というふうに。

どの名も、文章と文章につけられた参考文献の紹介部分を読むと、どの国を指すのか類推することができる。

私は特に第24話、原子力の時代が著者の公式サイトで公開されたときに、なぜ絵本の国とか基地帝国とか存在しない国名に言い換える必要があるんだろう、と疑問に思った。

あれだけ正当な文献に基づいて精密に組まれた主張なんだから、実名で書けばいいのにと思った。

でも『うさぎ!』を通読して自分なりに納得できた。

この物語は、今の世界を切り取る形で書かれていない。

「むかしむかしあるところに…」と、昔話の典型的な語り出しから始まるこの物語は、ある未来の場所から、昔の世界を振り返る形で描かれている。

その昔の世界は、お金をたくさん持っていることを「豊か」と言う、不思議な世界。

そのお話が語られる、とある未来の世界は、今の世の延長ではないのだろうと思う。

灰色に支配されない世界。

それが「ある」ことを前提に、『うさぎ!』は書かれているのだろう。


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